MICS(ミックス)とは、従来の胸部を大きく切開する手術とは異なり、小さな傷で心臓手術を行う方法です。この術式は身体への負担が軽く、痛みが少ないというメリットがあり、近年急速に普及しています。将来的には、一般的な弁膜症手術の主流となることが期待されています。
当科では、2016年からMICS(ミックス)を導入しており、日常的にこの手術を行っています。これまでに300例を超える手術実績があり、豊富な経験を積み重ねてきました。対象となる手術には、僧帽弁形成術や置換術、大動脈弁置換術、三尖弁形成術、心房細動に対するメイズ手術、心房中隔欠損症閉鎖術、心臓腫瘍(左房粘液腫)切除術、そして冠動脈バイパス術などが含まれ、幅広い症例に対応可能です。私たちは、患者さま一人ひとりに合った最善の治療を提供するために、MICS(ミックス)手術を通じて身体への負担を軽減し、より良い治療結果を目指しています。
MICS(ミックス)といっても、胸骨を部分的に切開するもの、直視下、内視鏡下、ロボット(ダビンチ)支援など、様々なスタイルがあります。当科では、2021年から3D内視鏡MICSを導入しました。この方法は特殊な偏光メガネを使って高精度のMICSを簡便に行う方法です。傷がごく小さく、開胸器(傷を広げる器械)を使用しないため、従来のMICSに比べて圧倒的に痛みが軽いという特徴があり、ご自分で車を運転して退院される方もおられます。
ロボット(ダビンチ)手術に続いて2015年に登場した最新のMICSですが、現時点で全国的にも限られた施設のみで施行されています。当施設では、この方法によって手術の精度が飛躍的に向上し、従来の正中切開や直視下MICSでは困難だった手術が可能となりました。当院では、ほとんどの弁膜症手術を3D内視鏡MICSでおこなっています。
・MICS (ミックス)術後の写真です。痛みが残らず、退院後の運動制限がないので、退院後すぐに車の運転が可能です。
・胸骨の感染がなく、従来の正中切開と全く同じ内容の手術をより高い精度で、それが3D内視鏡MICS(ミックス)です。
・特別な事情がなければ、MICS MVP(僧帽弁形成)+TAP(三尖弁形成)+Maze(メイズ)+左心耳切除の重複症例でもMICSで施行しています。
・他院で3度の僧帽弁手術(正中切開)を受けておられた患者様が4度目の僧帽弁再手術をMICSで受けられました。痛みもほとんどなく術後8日目に退院されました。
・山田部長が病院広報紙にてMICSについて掲載しております。(2~5ページ)
病院広報紙 ほほえんde北播磨第40号
私たちは、ほぼすべての僧帽弁手術において3D内視鏡MICS(ミックス)を採用しています。この技術により、従来の胸骨を切開する手術と同等の内容を、3D内視鏡の精密な画像を活用して、より高い精度で実現することが可能です。手術はわずか3~4cmの小さな切開で行え、胸を開く器具を使用しないため、患者さんの身体的負担を大幅に軽減できます。術後の痛みも最小限に抑えられ、多くの場合、数か月以内にほとんど気にならなくなります。最先端技術を駆使し、安全かつ確実な手術を提供することを目指し、私たちは日々取り組んでいます。これまでの症例を重ねる中で、複雑な症例であってもMICSをあきらめるケースはほとんどなくなりました。また、高齢者やハイリスクな患者さまにも、この「3D内視鏡MICS」の恩恵をお届けできるよう努めています。
3D内視鏡下僧帽弁形成術の逆流制御(n=103)
MICS僧帽弁手術 -再手術-
当科におけるMICSを用いた僧帽弁手術では、難易度が高いと言われている再手術の割合が22%に達しています。この数字は、3D内視鏡を用いたMICSが再手術でも安定して施行できていることを示唆しています。僧帽弁再手術はMICSの方が正中切開よりも安全性が高いという報告もあります。
私たちは、開胸器を使用しない「3D内視鏡MICS(ミックス)」を基本に採用し、すべての人工弁に対応した手術を行っています。さらに、従来の直視下MICSと組み合わせることで、ほとんどの大動脈弁置換術をMICSで施行することが可能となりました。また、メイズ手術や僧帽弁手術との複合手術にも対応しており、患者さん一人ひとりに適した治療を提供しています。
冠動脈バイパスは開胸器を用いて直視下に行っています。多枝バイパスによって、より多くの患者様に対応するためです。神経ブロックを用いて、痛みを最小限にするよう心がけています。
これらの手術は、MICS(ミックス)僧帽弁手術や大動脈弁手術に必要な技術の範囲内で対処できます。
通常の保険診療が適応されますので、患者様の負担は通常手術と同じです。高額医療制度が適応されます。
当院では、北播磨地域のみならず、神戸市中央区や姫路市、加古川市、三田市、丹波市をはじめ、他県からも多くの患者さまにご来院いただいております。 手術後は、約1週間程度での退院が可能で、その後は地元のかかりつけ医と連携しながら、丁寧な術後フォローを行っています。これにより、遠方にお住まいの方でも安心して治療を受けていただける環境を整えております。
術後の通院も、最終的には年1回程度で済む患者さまがほとんどです。遠方の患者さまにも安心と信頼の医療をお届けするため、私たちは全力でサポートいたします。
当院では、セカンドオピニオンを積極的に受け付けております。心臓手術の方法は施設によって大きく異なることがあるため、患者さまにとって最善の選択をしていただけるよう、全力でサポートいたします。
私たちは「自分の大切な家族に勧めたいと思える手術」を提供することを目指し、日々努力を重ねています。患者さま一人ひとりに寄り添い、最適な治療をお届けするため、当科の治療方針や実績について丁寧にご説明いたします。
患者さまの健康と安心を第一に、心を込めてお手伝いさせていただきます。
当科は北播磨地域の基幹病院としての役割を担うべく、成人循環器疾患の全分野を対象に診療を行っています。治療分野は、虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞など)や弁膜症疾患(大動脈弁、僧帽弁、三尖弁など)、大動脈疾患(胸部や腹部の大動脈瘤、急性大動脈解離など)、末梢動脈疾患(急性動脈閉塞や慢性の動脈閉塞、重症虚血肢など)、静脈疾患(下肢静脈瘤や深部静脈血栓症、肺塞栓症など)など循環器疾患に関わるほぼすべての領域の手術を行っています。
低侵襲心臓手術(MICS)に積極的に取り組んでおり、全国的にも有数のMICS症例数をこなす施設です。冠動脈バイパス術、僧帽弁形成/置換術、メイズ手術、三尖弁形成術、大動脈弁置換術、心房中隔欠損症、心臓粘液腫などがMICSの対象となります。大動脈弁狭窄症に対するカテーテル治療(TAVI)もハートチームで行っています。
大動脈瘤の治療においては、ステントグラフト内挿術を行い低侵襲化に努めています。
静脈疾患については、主に下肢静脈瘤に対する血管内焼灼、ストリッピング手術を行っています。
僧帽弁形成術後SAMに関する研究 (令和5年7月24日承認)
開心術における尿中NGALに関する研究 (令和5年7月24日承認)
『脳神経障害を伴った急性A型大動脈解離の現状と治療成績 富山大学および神戸大学関連心臓血管外科施設における多施設共同研究』に対するご協力のお願い (令和4年1月4日承認)
大動脈解離もしくは解離性大動脈瘤でステントグラフトによる治療を受けられた方に対するご協力のお願い (平成29年4月4日承認)
氏名 | 補職名 | 卒年 | 資格等 |
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森本 喜久 (もりもと よしひさ) |
先端医療センター副センター長(低侵襲心臓血管治療部門)兼心臓血管外科部長兼診療科長兼循環器センター副センター長 | 1992 |
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山田 章貴 (やまだ あきとし) |
心臓血管外科部長 重症虚血肢センター長 |
1998 |
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中井 秀和 (なかい ひでかず) |
主任医長 | 2006 |
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佐藤 雅信 (さとう まさのぶ) |
主任医長 | 2008 |
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当广 遼 (とうま りょう) |
医長 | 2014 |
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麻田 達郎 (あさだ たつろう) |
嘱託医 | 1976 |
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顔 邦男 (がん くにお) |
嘱託医 | 1983 |
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