当センター呼吸器外科は肺悪性疾患を中心として、呼吸器の外科的疾患全般を幅広く取り扱っています。肺癌に対しては1期、2期例に内視鏡手術やロボット支援下の低侵襲手術を行い、3期、4期の進行癌に対しても呼吸器内科や放射線治療科との連携をもとに、抗癌剤や分子標的治療薬、及び免疫チェックポイント阻害薬、放射線照射による治療を行った後に切除を行っています。
主な対象疾患は以下のとおりです。
・原発性肺癌、及び転移性肺腫瘍などの肺悪性腫瘍
・気胸などの嚢胞性疾患
・縦隔腫瘍、胸壁腫瘍、中皮腫などの腫瘍性疾患
・膿胸や胸膜炎、縦隔炎など炎症性疾患、その他
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | |
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AM | 手術 | 髙田 再診(初診) |
藤林 処置 |
髙田 初診/再診 |
手術 |
PM | - | 合同カンファレンス | - |
北播磨総合医療センター呼吸器外科は2014年4月に開設されました。以来8年余りの間、当地域における呼吸器の外科的疾患に関する専門施設として活動して参りましたので、その一端を御紹介いたします。
当科の開設当初から行っている5科合同肺癌カンファレンス(呼吸器内科、呼吸器外科、放射線診断科、病理診断科、腫瘍内科)は2022年の3月には第280回を超えました。このカンファレンスには本センター呼吸器グループアドバイザ―の坪田紀明先生(呼吸器外科,兵庫県立がんセンター名誉院長)と本センターの健康管理センター長 足立秀治先生(放射線科,兵庫県立がんセンター名誉院長)も参加していただき、患者さん一人ひとりに対してエビデンスに基づいた最適の治療法選択をめざしています。これらの症例の一部につきましては、年4回発行のCPCレポートとして、本ホームページにも掲載しておりますのでご覧いただければ幸いです。
当科における手術件数は開設した2014年4月1日から2021年12月31日までの時点で合計642例になりました。この内、原発性肺癌に対する手術件数は307例で、それらの術式別頻度を図1に示しています。当科では低侵襲手術を積極的に取り入れていますので、胸腔鏡下の手術(VATS)は肺葉切除例の86%に、早期癌に対する区域切除は84%に達しています。
図2には肺癌以外の他疾患の疾患別手術数を示します。
2014年4月1日から2021年12月31日までに原発性肺癌に対して施行した手術307例全体の5生率は71.8% 、病理病期別ではstage0及びIA1;100%、IA2;83.7%、IA3;79.4%、IB;63.8%、IIA;58.6%IIB;57.9%、IIIA;47.7%、IIIB;33.3%でした。図3に病理病期別頻度を、図4に全体の生存曲線を示します。
当科では昨年4月から肺悪性腫瘍に対するロボット支援下手術を開始しました。今回、使用した内視鏡手術支援ロボットda Vinciは、2015年に当センターに導入され、これまでに泌尿器科及び消化器外科において使用されてきました。
肺悪性腫瘍に対するロボット支援下手術は2018年から保険診療が認められ、全国的に広まりつつあります。下に当センターのロボット支援下の肺癌手術室を示します。現在肺癌手術14例(葉切除13例,区域切除1例)、転移性肺腫瘍に対する区域切除1例を行い、良好な結果を得ております。
当センターは、一般社団法人National Clinical Database(NCD)の外科手術・治療情報データベース事業に参加しています(NCDホームページ)。
この事業は、日本全国の手術・治療情報を登録し、集計・分析することで医療の質の向上に役立て、患者さんに最善の医療を提供することを目指すプロジェクトです。この症例登録は、厳重な個人情報管理の元で実施されております。
本センター開設以来の当科における論文発表、学会発表は以下の通りです。
肋骨に発生した骨軟骨腫の1例. | 日呼外会誌. | 2015; 29: 37-41 |
原発性か転移性かの判断に苦慮した肺絨毛癌の1例. | 肺癌. | 2016; 56: 268-72 |
多彩な合併症と播種再発を繰り返した浸潤性胸腺腫の1例 -23年間の治療記録 | ||
日呼外会誌. | 2017; 31: 667-74 | |
肋骨原発骨巨細胞腫の1例. | 胸部外科(南江堂). | 2018; 71: 156-9 |
冠状動脈血行再建手術におけるグラフト被覆胸腺から発生した胸腺腫 | ||
胸部外科(南江堂). | 2019; 72: 438-41 |
肺絨毛癌の1手術例. | 第32回日本呼吸器外科学会総会(高松) | 2015. 5 |
術後補助化学療法に苦慮した大腸内分泌細胞癌・肺腺癌の同時性重複癌の1例. | ||
第56回日本肺癌学会学術集会(横浜) | 2015. 11 | |
異時性、同時性重複癌として両側乳癌を有する肺腫瘍に対し右S1+2区域切除を施行した1例. | ||
第57回日本肺癌学会学術集会(福岡) | 2016. 12 | |
早期大腸癌と同時性に確認された径3 mmの肺腫瘤に対する治療経験. | ||
第104回日本肺癌学会関西支部会 | 2017. 2 | |
左肺不全分葉症例における葉間切離の工夫(葉間吊り橋法) | ||
第36回近畿胸腔鏡研究会 | 2017. 2 | |
術前の画像情報が,V6aの異常走行 -破格V2への還流- を明らかにした右下葉肺癌の1手術例. | ||
第34回日本呼吸器外科学会総会(福岡) | 2017. 5 | |
たこつぼ型心筋症を合併した難治性左気胸に対する手術に,PCPSが有用であった1例. | ||
第60回関西胸部外科学会学術集会 | 2017. 6 | |
3年間の経過観察で浸潤癌に進展したと判断し,区域切除を行った肺上皮内腺癌の1例 ─新分類(2017)の病期判定に及ぼす影響─ | ||
第105回日本肺癌学会関西支部会 | 2017. 6 | |
CABG後のグラフトに囲まれて発生した胸腺腫の1手術例 -術中のグラフト損傷回避に対する工夫-. | ||
第70回日本胸部外科学会定期学術集会(札幌) | 2017. 9 | |
7年間のCT画像記録を有する肺癌の1手術例 | ||
第107回肺癌学会関西支部会 | 2018. 2 | |
3ヶ月のフォローで大きさが約3倍に増大した小型進行肺癌―大細胞神経内分泌癌(LCNEC)―の1手術例 | ||
第108回肺癌学会関西支部会 | 2018. 6 | |
肺癌との鑑別を要した結節性肺アミロイドーシスの 1 例 | ||
第59回肺癌学会学術集会(東京) | 2018. 11 | |
後縦隔左側に発生したミュラー管嚢胞に対する胸腔鏡下手術の1例 | ||
第31回日本内視鏡外科学会総会(福岡) | 2018. 2 | |
原発性肺腺癌近傍に併発し肺葉切除で偶然発見されたtumorletの1例 | ||
第109回日本肺癌学会関西支部学術集会 | 2019. 2 | |
アプローチと切除範囲の決定に苦慮した胸腺腫瘍の2例 -人工気胸を用いた胸腔鏡下胸腺摘除のピットフォール- | ||
第109回日本肺癌学会関西支部学術集会 | 2019. 2 | |
Hemiclam shell approachにて切除を行った右上葉肺癌の2例 | ||
第20回胸骨正中切開による肺癌手術懇話会 | 2019. 4 | |
Hemi-clamshell approachにてbulky縦隔転移リンパ節と右上葉切除を行った間質性肺炎合併肺癌の1例 | ||
第36回日本呼吸器外科学会学術総会(京都) | 2019. 5 | |
腫瘍の腫瘍内転移 甲状腺腫内に転移した肺腺癌の1例 | ||
第36回日本呼吸器外科学会学術総会(京都) | 2019. 5 | |
末梢発生肺粘表皮癌の1手術例 | ||
第 110 回 日本肺癌学会関西支部学術集会 | 2019. 6 | |
微小胸腺腫を合併した多房性胸腺嚢胞の1切除例 | ||
第60回日本肺癌学会学術集会(大阪) | 2019. 12 | |
内部に広範な壊死をきたし、緊急に手術が必要となった胸腺癌の1例 | ||
第60回日本肺癌学会学術集会(大阪) | 2019. 12 | |
興味深い臨床経過と画像所見を呈した肺真菌症合併カルチノイドの1手術例 | ||
第 111 回 日本肺癌学会関西支部学術集会 | 2020. 2 | |
小型ながらリンパ節転移を有したLCNEC(大細胞神経内分泌癌)の2手術例 | ||
第 111 回 日本肺癌学会関西支部学術集会 | 2020. 2 | |
臓側胸膜に肺瘻を認めた月経随伴性気胸の1例 | ||
第24回日本気胸・嚢胞性肺疾患学会総会 | 2020. 9 | |
中間幹閉塞に対し手術を行った多発血管炎性肉芽腫症(Wegener肉芽腫症)の1例 | ||
第37回日本呼吸器外科学会学術集会 | 2020. 9 | |
切除困難と思われた症例に対するPembrolizumabの驚くべき効果 - 術前化学療法が奏功した左肺門部肺癌の1例 - |
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第37回日本呼吸器外科学会学術集会 | 2020. 9 | |
嚢胞性と充実性病変からなる、上縦隔発生だるま型胸腺腫の1手術例 | ||
第61回日本肺癌学会学術集会 | 2020. 11 | |
胸膜原発MALTリンパ腫の2例 | ||
第61回日本肺癌学会学術集会 | 2020. 11 | |
当院における腺扁平上皮癌切除例の3例 | ||
第61回日本肺癌学会学術集会 | 2020. 11 | |
予防的なIABPの実施の下に行った小細胞肺癌の1手術例 | ||
第38回日本呼吸器外科学会学術集会 | 2021. 5 | |
histologically proven bulky N2症例に対するconversion手術 興味ある組織学的変化を示した1例 |
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第38回日本呼吸器外科学会学術集会 | 2021. 5 | |
肺癌に対するサルベージ手術の1奏効例 化学療法に異なる反応を示した原発巣とbulky N2について |
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第38回日本呼吸器外科学会学術集会 | 2021. 5 | |
臨床経過が3様であったサルベージ手術の3例 | ||
第114回 日本肺癌学会関西支部学術集会 | 2021. 6 | |
転移巣の摘出後1年を経て胸部異常影の出現した肺癌の1切除例 | ||
第62回日本肺癌学会学術集会 | 2021. 11 |
氏名 | 補職名 | 卒年 | 資格等 |
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髙田 昌彦 (たかた まさひこ) |
呼吸器外科部長兼診療科長兼呼吸器センター副センター長 |
1995 |
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坪田 紀明 (つぼた のりあき) |
呼吸器グループアドバイザー | 1965 |
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宇野 友規 (うの ゆうき) |
専攻医 | 2020 |