認知機能は加齢とともに低下するといわれていますが、背景に病気が潜んでいると年齢相応以上にその機能は低下します。記憶や判断などを行う脳の機能が低下し、仕事や日常生活に支障が生じた状態を認知症といいます。厚労省の研究班が2022年から2023年にかけて実施した調査によると、2040年には認知症が約584万人、軽度認知機能障害が約613万人にのぼると報告されています。高齢者人口が多い北播磨医療圏においても、認知症の人は今後さらに増加すると推測されます。
認知症の原因はさまざまで、代表的なものにアルツハイマー病、脳血管障害、レビー小体病、前頭側頭葉変性症があります。認知症の症状は初期段階では記憶・判断力の低下や日付や場所のまちがいのみですが、進行すると妄想や幻覚などの行動・心理症状(Behavioral psychological symptoms of dementia;BPSD)を認めるようになります。このように、認知症診療において認知症の原因や治療対象となる症状もさまざまですが、これらに対応できるように当センターでは関連診療科が密に連携し、適切な診断や治療、個々の症例にあわせた日常生活上の助言が行える体制を整えています。また、周辺病院や診療所とも連携を円滑に行い、包括的で一貫性のある医療を提供するようにしています。
一方で、2023年12月にアルツハイマー病の新しい薬であるレカネマブが発売されました。これまでの薬と違ってアルツハイマー病の原因となる脳内に貯まったアミロイドβというタンパク質を除去することによって症状の進行を遅らせることが期待されています。この薬の対象は、「アルツハイマー病による軽度認知機能障害」と「アルツハイマー病による軽度認知症」の方です。この薬は認知症の専門診療を適切に行えるための一定の基準を満たした医療機関でのみ治療開始が可能な薬で、当センターは、その基準を満たしておりレカネマブの治療が可能です。
認知症の早期発見、早期治療を行いつつ、認知症になった人が尊厳を保持しつつ、希望を持って暮らすことができるように努めてまいります。
脳神経内科、精神神経科、リハビリテーション科、放射線診断科