センター長ご挨拶
センター長(ロボット手術部門)
田中一志
2016年4月に神戸大学から当院に赴任し、先端医療センター(ロボット手術部門)を担当しております。
神戸大学では、2010年にダヴィンチ(内視鏡下手術支援ロボット)が導入される時から関わらせていただいてきました。
それまで、腹腔鏡を用いた手術を多く行っていましたが、可動域が広く自由度の高い鉗子の動きや、手ブレ防止機能等により、従来の腹腔鏡手術とは異次元のクオリティーに驚愕しました。神戸大学では、ダヴィンチを使用した前立腺がんによる前立腺全摘術(以後、「前立腺全摘術」)は200例以上、腎臓がんによる腎臓の部分切除術(以後、「腎部分切除術」)は100例以上経験してきました。
当院でも本センター開設後、各診療科、各部署が協力し、安全にロボット手術を施行しております。その治療成績は全国の他施設と比較しても遜色ないものです。
これからも三木・小野市民の患者さんをはじめとし、より多くの患者さんに先進的な医療を提供してまいります。
診療内容と特色
ダヴィンチ(内視鏡手術支援ロボット)
ダヴィンチは多自由度鉗子による狭いスペースでの繊細な動き、高画質の3D視野、手ぶれ防止などの良好な操作性といった特徴を備えています。また腹腔鏡手術同様、8mmのトロカー(細い筒)を通して手術を行うことから、ダヴィンチは高度な手術を高い精度で低侵襲に行うことを可能にする手術支援ロボットです
ダヴィンチは、医師がサージョンコンソールという機械に座り、患者さんに直接触れずに遠隔操作で手術を行います。医師は内視鏡カメラからの高精細な映像を3D表示できるモニターの画像を見ながら、ロボットアームに付けられた3本の鉗子で手術します。
3本の鉗子は非常に可動域が広く、動きの自由度に優れると同時に、手ブレ防止機能を有し、安全性が高いのが特徴です。この機能のおかげで、奥まっている部分に位置し、繊細な操作が必要である前立腺全摘術等、通常の開腹手術では困難な手術に非常に適しています。また、患者さんにとっては、傷口が小さく出血が少ないため、術後の痛みが少ない、回復が早い等のメリットがあります。さらに繊細な操作が可能なことから、より精度の高いがん病巣の切除手術や機能温存手術が可能となっています。
医師にとっても、座って手術ができるため、長時間の手術において、肉体的負担が軽減されます。
当院では2015年3月にダヴィンチSiが導入されました。導入当初は前立腺手術のみが保険適応でしたが、次に腎部分切除術が保険承認され、泌尿器科領域が先行していましたが、2018年から一般外科領域等にも保険診療が広がり、2020年度には新たに7つの術式が保険承認され、より多くの手術で保険診療が可能となっています。 また、2020年4月には最新最上位モデルのダヴィンチXiに更新されました。 さらにそれに合わせて手術支援ロボットと連動できる手術台も同時導入され、これによって従来のロボット手術の弱点であった、術野および可動域の狭さといった欠点が解消され、より幅広い術式に対して高精度かつ低侵襲な手術が可能となっています。
2018年度はロボット支援前立腺全摘術68例、ロボット支援腎部分切除術14例、胃がんに対するロボット手術8例、直腸癌に対するロボット手術10例行いました。ロボット手術全体では100件となっています。
前立腺がん
生活習慣の欧米化の進行に伴い、日本においても前立腺がんの患者さんは増加傾向にあります。前立腺がんは骨やリンパ節に転移することがあり、前立腺全摘術を受けられる患者さんは原則としてこれらの転移のない患者さんです。前立腺全摘術ではロボット手術が他の手術方法(開腹手術、腹腔鏡手術)より優れていることが示されており、当院では先端医療センター開設以来、前立腺全摘術は100%ロボット手術で行っています。
腎臓がん
ロボット手術について、はじめは前立腺全摘術のみが保険適応でしたが、2016年4月より腎部分切除術が保険収載されました。
腎臓がんに対する腎臓の部分切除は、かなり以前は開腹で行われていましたが、大きな切開創を必要とし、手術侵襲が大きいことから、低侵襲を目的に腹腔鏡手術がロボット手術の保険適応までは行われていました。
腎臓部分切除の際には、腎臓への血流を遮断する必要がありますが、腎臓の機能を良好に温存することができる血流遮断の目安時間は25分と言われています。しかし、国内の統計では、腹腔鏡を用いた場合、25分以内に血流を再開させられる確率は25%程度でした。一方、ダヴィンチを用いた場合、その確率は80%以上となり、より多くの腎臓の機能を温存することができるようになりました。ダヴィンチで手術することが非常に有用な病気と言えます。
今後の展望等
前述しましたように、前立腺がん、腎がんなど、ロボット手術の保険適応は初め泌尿器科領域のみでしたが、2018年4月から外科領域等14術式が保険適応に追加され、さらに2020年4月から新たに7術式が保険収載されています。
これにあわせ、当センターでも様々な診療科でダヴィンチを使用した手術が増えてくることが想定されます。これまで培った経験・技術をいかし、関連する診療科、部署と協力して、これからも高度な先端的医療であるロボット手術を安全に提供していきます。
スタッフ紹介
氏名 |
補職名 |
卒年 |
資格等 |
田中 一志 (たなか かずし) |
先端医療センター長(ロボット手術部門) 兼泌尿器科部長兼診療科長 |
1990 |
- 日本泌尿器科学会専門医・指導医
- 日本化学療法学会抗菌化学療法認定医
- 日本化学療法学会抗菌薬臨床試験指導医
- 日本がん治療認定医機構がん治療認定医
- 日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会内分泌・甲状腺外科登録認定医
- 日本内視鏡外科学会技術認定(泌尿器腹腔鏡)
- 日本泌尿器科学会・日本泌尿器内視鏡学会泌尿器腹腔鏡技術認定
- 日本泌尿器科学会・日本泌尿器内視鏡学会泌尿器ロボット支援手術プロクター認定
- ICD制度協議会インフェクションコントロールドクター
- 泌尿器科daVinci手術認定
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角井 健太 (すみい けんた) |
主任医長 |
2008 |
- 日本泌尿器科学会専門医・指導医
- 日本生殖医学会生殖医療専門医
- 日本性機能学会専門医
- 日本泌尿器科学会・日本泌尿器内視鏡学会泌尿器腹腔鏡技術認定
- 泌尿器科daVinci手術認定
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坪谷 一樹 (つぼたに かずき) |
医長 |
2017 |
- 泌尿器科daVinci手術認定
- 日本泌尿器科学会専門医
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