多くの医療行為は、身体に対する侵襲(ダメージ)を伴います。そのため、医療行為を行う際には、医療行為による利益(治療の効果)と身体への侵襲の不利益を検討し、利益(効果)が不利益を上回る場合に、その医療行為を行うことを決定します。
しかし、医療は本質的に不確実・不確定なもので、医療行為にはリスクがあります。過失がなくとも予期せぬ重大な合併症や事故が起こり得ます。医療行為と無関係の病気や加齢に伴う症状が医療行為の前後に発症することもあります。合併症や偶発症が起これば、勿論、治療には最善を尽くしますが、予後に影響を及ぼすような後遺障害が残存したり、時に死亡に至ることもあり得ます。予想される重要・重大な合併症については説明いたしますが、極めて稀なものや予想外のものもあり、全ての可能性を言い尽くすことはできません。こうした医療の不確実性は、人間の生命の複雑性や有限性、各個人の多様性、医学の限界に由来するものであり、低減させることはできても、消滅させることはできません。また、アレルギーによるショックや薬剤による副作用等、これまで大丈夫だったにもかかわらず、いきなり有害事象が生じるということもあります。
過失による身体障害があれば病院側に賠償責任が生じます。しかし、過失を伴わない・不可抗力の合併症・偶発症の発生に対しては、病院に賠償責任は生じません。また、合併症・偶発症が生じた場合、最善の治療を行いますが、その際の医療費は通常の保険診療で行うことになります(患者さんに自己負担が生じます)。
医療行為に伴う侵襲と合併症・偶発症の発症リスク、医療の不確実性と限界、不可抗力についてご理解いただいた上で、各種治療や検査をお受けいただきますようお願い致します。説明・治療内容について疑問・不安がある場合には、納得・理解できるまで、主治医(外来担当医)にお尋ねください。
納得できない場合、時間にゆとりがあれば、無理に結論を出さずに、他の医療機関の医師の意見(セカンド・オピニオン)を聞くことをお勧めします。その際に、必要な資料は提供いたします。他の医師の意見を求めることで不利な扱いを受けることはありません。
平成27年11月 医療安全管理室