当院では、患者さんの救命治療を最優先と考え、『相対的無輸血治療』(注1)を行います。宗教上の理由などにより輸血を拒否される患者さんに対しては、以下の指針に従って対応いたします。
- いかなる場合も、『絶対的無輸血治療』(注2)は行いません。緊急時には、同意なく輸血を行うことがあります。
直ちに輸血を行わなければ患者さんの生命に危険が及ぶような緊急の状況においては、救命を優先し、患者さん・ご家族の同意の有無に関わらず、輸血を行います。また、患者さんの急変など救命のために緊急手術・治療が必要と判断される場合においては、輸血拒否により手術・治療の同意が得られない場合でも、処置を開始し、必要に応じて輸血を行います。
- 輸血を拒否される15歳以上の患者さんに対しては、『相対的無輸血治療』で対応いたします。
患者さんの意志を尊重し、可能な限り輸血を行いませんが、「輸血以外に救命手段がない」事態に至った場合には、輸血を行います。
- 患者さんが持参される「免責証書」、その他名称を問わず絶対的無輸血治療実施を内容とする一切の文書に対しては、医師は署名をいたしません。
- 『相対的無輸血治療』に同意いただけない場合は、転院をお勧めいたします。
医師より、治療・手術における輸血療法の必要性について説明を聞いた上でもなお、『絶対的無輸血治療』を希望される場合には、ご希望に添うことができませんので、転院を勧めます。
- 15歳未満や本人の意思確認ができない(判断能力を欠く)15歳以上の患者さんに対しては、安全で適正な輸血療法を実施いたします。
『相対的無輸血治療』も一定の危険を伴うため、安全を重視し、通常の輸血療法を行います。
(注1) 相対的無輸血治療
患者さんの意志を尊重し、できる限り無輸血治療に努力するが、「輸血以外に救命手段がない」事態に至った場合は輸血を行う治療
(注2) 絶対的無輸血治療
いかなる場合でも輸血を行わず、輸血により救命できる可能性があっても輸血を行わない治療
上記の内容について、同意できない方は、担当医師にお申し出ください。お申し出がない場合は、同意を得たものとして、「相対的無輸血治療」で対応させていただきます。
ご質問がある場合は、患者相談窓口(地域医療連携室)までお尋ねください。
【参考】「判断能力と同意」
医療に関する判断能力と同意に関しては、年齢ごとに、「宗教的輸血拒否に関するガイドライン」(5学会合同委員会)の指針に則り、以下のように対応いたします。
1.患者が18歳以上で医療に関する判断能力がある人の場合
(なお、医療に関する判断能力は主治医を含めた複数の医師によって評価する)
(1)患者が輸血に同意する場合は、患者から輸血同意書をもらう。
(2)患者が輸血を拒否する場合は、診療科側は、患者に早めに転院を勧告する。
2.患者が18歳未満、または医療に関する判断能力がないと判断される場合
(1)患者が15歳以上で医療に関する判断能力がある場合
①親権者は輸血を拒否するが、患者が輸血を希望する場合は、患者から輸血同意書をもらう。
②親権者は輸血を希望するが、患者が輸血を拒否する場合は、親権者から輸血同意書をもらう。
③親権者と患者の両者が輸血拒否する場合は、診療科側は患者・親権者に早めに転院を勧告する。
(2)患者が15歳未満、または医療に関する判断能力がない場合
①親権者の双方が拒否する場合、親権者の同意が全く得られず、むしろ治療行為が阻害されるような状況においては、児童相談所に虐待通告し、児童相談所で一時保護の上、児童相談所から親権喪失を申し立て、あわせて親権者の職務停止の処分を受け、親権代行者から輸血同意書をもらう。
②親権者の一方が輸血に同意し、他方が拒否する場合は、輸血を希望する親権者から輸血同意書をもらう。
平成27年8月12日 病院長